玉掛け用のワイヤーロープには、種類がたくさんある上に、ロープ径も多いので、選ぶのに迷いやすいですね。
選ぶのが面倒だからといって、過去の経験的な判断に基づいて選定すると、事故の原因となってしまいます。
そこで本ページでは、玉掛け用のワイヤーロープの概要から、種類と点検・廃棄基準までお伝えしていきます。
玉掛けのワイヤーロープとは
ワイヤロープは、耐衝撃性や柔軟性等に優れているロープです。
構造としては、線引き加工した継ぎ目のない鋼線を、より合わせてストランド(子なわ)を作り、一定の間隔で心綱に巻きつくようにより合わせたものとなります。
ワイヤーロープの代表的な特長として、次の4つが挙げられます。
- 引っ張り強度が高い
- 耐衝撃性に優れている
- 長尺物が得られる
- 柔軟性に富む
ロープの中心にあるのが心綱で、複数の素線をより合わせて、心綱の周囲に6本よられているものをストランドと呼びます。
ストランドを構成している鋼線が、素線となります。
ワイヤーロープのより方による種類
ワイヤーロープは、ワイヤーロープのより方と、ストランドのより方によって、4つに分類することができます。
ワイヤーロープのより方には、「普通より」と「ラングより」の2つがあります。
またそれぞれのより方について、「より方向」での区別もあります。
以下から、くわしく解説します。
より方による区別
<普通より>
ロープのより方向とストランドのより方向が“違う”方向によられている。
<ラングより>
ロープのより方向とストランドのより方向が“同じ”方向によられている。
より方向による区別
<Zより>
右巻き(右回り)です。
ロープの端を手前に向けねじりの方向が左下、アルファベットのZの向きである事からZよりと呼ばれています。
以前は、左よりとも言われていましたが、右巻きの左よりと右左が間違いやすく、諸外国と合わせる意味でも、ローマ字で表されるのが一般的です。
<Sより>
左巻き(左回り)です。
ロープの端を手前に向け、ねじりの方向が右下、アルファベットのSの向きである事から、Sよりと呼ばれます。
以前は、右よりともいわれていましたが、左よりと同様の理由で、ローマ字で表されるのが一般的となっています。
玉掛け作業に一般的に用いられるよりの種類
4つの中では、普通Zよりが一般的に使用され、ねじれや型くずれやキンクなどを起こしにくく、取扱いが容易です。
ラングよりは、普通よりと比較して摩耗に強いですが、より戻しをしやすく、キンクを起こしやすい問題があります。
玉掛けワイヤーロープと台付けワイヤーロープの違い
玉掛け用ワイヤーロープのアイプライス加工に非常によく似たロープに、台付けワイヤーロープがあります。
台付けワイヤーロープは、トラックの荷台に荷物を固定するのに用いるため、玉掛け作業に使用することはできません。
玉掛け用ワイヤーロープは、アイスプライス加工方法(編み込み回数・加工方法)が、クレーン等安全規則第219条・労働安全衛生規則第475条に定められています。
一方で、台付ワイヤーロープは、アイスプライス加工方法が定められていいないため、玉掛け作業に使用すると、編み込みが外れて事故を引き起こす危険性があります。
見分け方
外見は同じように見えますが、玉掛けワイヤーロープは半差し(ストランドを半分に切り落すこと)を行うため、差し終わりが細くなっていますが、台付けワイヤーロープは行わないため、筒形で段がついています。
切断した時に現れるヒゲの数が異なり、玉掛ワイヤーロープが2箇所に対し、台付けワイヤーロープは1箇所です。
ワイヤーロープの端末処理の種類
ワイヤーロープの端末処理には、いくつかの方法がありますが、玉掛け用では次の2つが使用されます。
アイスプライス加工(アイ加工)
ストランドをワイヤーロープの間に差し込み、アイを作り加工する方法で、さつま加工とも呼ばれます。
ロープの端末をストランドにほどいて、そのストランドをロープ本体のストランドの間に通して、本体ロープのよりの方向と同じ方向に巻く”巻き差”しがあります。
また同じ方法で、本体ロープのより方法と反対方法に編む”かご差し”もあります。
どちらも手作業であるため、加工強度に多少ばらつきがあるのがデメリットです。
圧縮止め加工(ロック加工)
ワイヤーロープ径ごとの金型があり、アイの根元に金属(スリーブ)を入れ圧縮加工をする方法です。
よく使用される加工方法で、加工強度が高く、加工効率も安定します。
玉掛け作業に使用するワイヤーロープの点検と廃棄基準
ワイヤーロープは、消耗品です。
使用を重なる度に、次第に損傷していくので、ある基準に達したら廃棄する必要があります。
以下から、ワイヤーロープを安全に使用するために行う点検事項と、廃棄基準を解説していきます。
ワイヤーロープの点検
作業前に行う日常点検と、月次や必要時に行う定期点検があり、型くずれ、摩耗・腐食、断線の順で点検を行います。
点検が終わったワイヤーロープについては、ビニールテープなどを用いて、色分けを行います。
色分けは、4か月ごとに1月からミ(緑)・ギ(黄色)・ア(赤)・シ(白)の順に、アイスプライス部の見やすい位置に、当てはまるテープを貼ります。
ワイヤーロープの廃棄基準
ワイヤーロープの廃棄を決める上では、必ず確認すべきポイントがありますので、順番に解説します。
ワイヤーロープ本体部
<断線>
ストランドの素線の総数に対して、断線数が「ロープ1より」の間において10%以上断線しているもの、もしくは「ロープ5より」の間において、20%以上断線しているもの
<摩耗>
直径の減少が公称径の7%を超えるもの
<腐食>
素線表面にピッチング(腐食した箇所が小さな穴が出来ること)が生じてあばた上になったものや、素線が緩んだもの
<キンク>
局部的によりが詰まったり戻ったりしているもの。(締まる方向はプラスキンク、よりの戻る方向はマイナスキンクという)
<うねり>
ワイヤーロープ径に対し、うねりの高さが4/3倍以上になったもの
<つぶれ>
著しく表面がつぶれた(潰れた部分:短径/ワイヤーロープ径:長径が2/3以下)
<きず>
著しい傷があるもの
アイ加工部
<型くずれ>
アイ部分にストランドなどの形くずれやロープのズレから、頂点部で著しく繊維心がはみ出したもの
ストランドのゆるみやつぶれを生じたもの
<断線>
アイスプライス:差し終わり部でストランドの抜け出しがあるもの
アイ圧縮止め:片側に凹み、抜け出しがあるもの
<スリーブ>
変形、つぶれ、き裂、割れ、腐食があるもの
摩耗して、公称径の95%以下ののもの
玉掛け作業に使用するワイヤーロープの保護具
ワイヤーロープの劣化を防ぐために、玉掛け作業時に使用する保護具を紹介します。
当てもの
荷物に角があるものや鋭利な時に、荷物の角に当て荷物やワイヤーロープを保護するために用いる。
荷物の角に角があたるとキンクが起きやすく、玉掛作業中にこのキンクが起こると事故の原因となるので注意。
布やゴム板・鉄板等、製品により様々なものを使い分けます。
まくら、歯止め
荷物が着地する際に下に置き、作業を安全効率よくするために用いられる。
荷物形状により転がったり滑ったりする場合があり、それを防止するためのストッパー(歯止め)として用いる。
2本1組で使用し、高さが揃っているものを使用する。
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